書籍紹介 腰痛ガイドブック 根拠に基づく治療戦略

はじめに
 わたしたちは今、腰痛について、いったい何を知っているというのでしょう?
 腰痛の原因は、直立二足歩行による過重な負担が腰を傷めつけたため、あるいは歳老いて腰が老化したためだとされています。
 だとすれば、ここは人類の宿命だと割り切り、甘んじて腰痛を受け入れるべきなのでしょうか?ガラス細工のような弱よわしい腰をかばいつつ、腰痛に怯えながら一生暮らさなければならないのでしょうか?そもそもそんな欠陥のある生物が、絶滅もせずにこの地球上で430万年も生存できるのでしょうか?


 これほどありふれた症状でありながら、腰痛はいまだに多くの謎に包まれたままで、実のところその正体はあまりよく分かっていないのです。というのも、自覚症状と理学所見や画像所見との関連性が低く、原因を明確に特定できるのは全腰痛患者の15パーセントにも満たないからです。

 そこでまず、EBMの土台となるサイエンスの部分を固めるために、従来の診断や治療の再評価が始まり、各分野で根拠に基づく診療ガイドラインが作成されるようになりました。そして今現在、少なくとも15の腰痛診療ガイドラインが全世界に存在します。
 この医学史に残る革命ともいえるプロセスにおいて、腰痛の分野では驚くべき変化が起きました。これまでの「生物学的(物理的・構造的)損傷」という機械的なモデルから脱却し、さまざまな要因によって生じる「生物・心理・社会的疼痛症候群」として腰痛を捉えるようになったのです。これがいわゆる腰痛概念の劇的な転換です。
 となれば当然、これまでの治療戦略を大幅に修正しなければなりません。身体的病変のみならず、腰痛の背景に隠された心理社会的側面にも焦点をあて、心身両面にわたる多角的アプローチが求められます。
 事実、すべての腰痛診療ガイドラインが、心理社会的因子を重視すべきだと勧告しています。
 しかし、ガイドラインが作成されたからといって、必ずしもあなたの助けになるとは限りません。医療システムが障害となってガイドラインに則した治療が出来ない場合もあれば、ガイドラインが推奨する方法があなたの価値観にそぐわない場合もあるからです。
 とはいえ、腰痛に対する態度と信念を根本的に改める事が、この問題を解決する突破口となるのは明らかです。
 たとえば、オーストラリアのビクトリア州では1997年に、ゴールデンタイムでのテレビCM、ラジオCM、新聞や雑誌の広告、屋外看板広告、ポスターなどを駆使して、新たな腰痛概念を伝えるマスメディア・キャンペーンを実施し、腰痛による欠勤、障害保険請求、医療費の大幅な削減に成功しているのです。

 世の中には、腰痛の治療法が数え切れないほどあります。確かに治療も大切かもしれません。ごく稀にですが、手術を躊躇すべきではない場合もあります。しかしそれ以上に大切なのは、新しくなった腰痛概念をよく理解し、腰痛にまつわる時代遅れの常識を捨て去り、腰痛に対して抱いている態度と信念を変えることなのです。

第一章 神話の崩壊 腰痛は人類の宿命か
 腰痛といえば、世間ではこんな噂がはびこっているようです。

「腰痛は、直立二足歩行を選択した人類の宿命であり、からだの重さに耐えきれなくなった腰の悲痛な叫びである」
「過重な負担で受けた腰の損傷は、背骨や椎間板の異常として画像検査で確認できる」
「腰痛に襲われたときは、痛みが消えるまで静かに寝ているのが鉄則」
「完治させるには手術によって腰を修理する以外にない」

 ずいぶんもっともらしく聞こえますが、この手の話はもはや完全に一蹴されていて、今では腰痛にまつわる神話でしかなく、前世紀の遺物と化しています。
 もしかするとあなたは、まだこんなブラフ(こけおど)に踊らされているのではないでしょうか?


 医学界はかつて、「腰部損傷」というモデルを頑なに信じ、あるはずの腰部損傷を見つけ出し、腰への負担を減らすことに熱中するあまり、患者たちに誤ったメッセージを伝えてきました。
 腰痛にまつわる迷信や神話は、こうした時代の中で芽吹いたわけですが、善かれと思って取り上げたメディアとネットの影響力もあって、腰はガラス細工の様に壊れやすいものだという印象を人々に与えました。
 そして身体を動かすことや腰に負担のかかる作業、損傷の再発に対する不安と恐怖を植え付けてしまったのです。
 しかし、背骨はガラス細工のようにもろくはありませんし、だるま落としのような単純な構造でもありません。
 

 これほど強力で適応性のある関節は、おそらく体中のどこを探しても見つからないでしょう。
 にもかかわらず、腰痛が仕事と関連する職業病だと考えた医学界は、重い荷物を持たせないようにし、正しい姿勢や正しい物の持ち上げ方を教え、コルセットやサポーターベルトで腰を守り、少しでも腰への負担を減らそうと躍起になってきました。

 ところが、腰痛は職業とも腰への物理的負担とも関係がなく、腰痛を防ぐ正しい姿勢や正しい物の持ち上げ方もなければ、コルセットやサポーターベルトも役立たないことが次々と判明しました。結局、この75年に及ぶ人間工学的アプローチは、徒労に終わったのです。


第二章 姿なき犯人 画像検査の価値を問う
 医師が患者診断する目的は二つあり、一つは危険な病気を除外するため、そしてもう一つは患者を安心させるためです。
 ところが、歳を重ねるごとに進行する「変形性脊椎症」や「椎間板変性」、手術を連想させる「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症」と診断された患者は、安心するどころか不安と恐怖におののき、自分の腰はもう一生治らないと考え、薄氷を踏むような思いで毎日を過ごすようになります。
 この誤った信念と行動が問題をこじらせ、患者をより深刻な状況へと追い込んでしまうのです。
 もしかすると、あなたもその一人ではありませんか?
 とはいえ、急に激しい痛みに襲われれば誰でも驚くでしょうし、何が起きたのか知りたくなるのが本能というものです。
 それは医学界とて同じで、腰痛を引き起こした犯人を見つけ出すために、ありとあらゆる手段を講じて血のにじむような努力を続けてきました。
 とりわけ画像検査技術の進歩は目覚ましく、レントゲン撮影、ミエログラフィー(脊髄造影)、ディスコグラフィー(椎間板造影)、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像法)などに加え、マルチスライスCTでは鮮明な三次元映像が得られるようになりました。それこそSF映画のようです。
 しかし、重大な病変が潜んでいる疑いがあるか、手術を要する切迫した状況でもない限り、ほとんどの腰痛患者にとって画像検査は役立ちません。なぜなら、画像所見と症状の間には、はっきりとした関連性が認められないからです。

 そこで医学界は、「脊柱管狭窄症」という病態に着目しました。神経の通り道である脊柱管が、老化による背骨の変形などで狭くなり、腰痛や下肢痛、歩行障害をきたすと考えたのです。
 ところが、進行性であるはずの脊柱管狭窄症の自然経過は概ね良好で、急激に悪化するようなことはまずありませんし、脊柱管がほんの少し狭くなっただけで激しい症状を訴える患者もいれば、完全に塞がっているのに症状のない健康な人もいて、脊柱管の狭さと症状の程度との間には相関性がありません。


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沖縄県沖縄市
富村カイロプラクティックオフィス
富村政昭

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