書籍紹介 NHKスペシャル うつ病治療 常識が変わる

プロローグ - うつ病はもはや“心のカゼ”ではない
 「1人の患者さんに対する診断が、どうしてこれだけ違うのか、理解し難いとしか言えません」
 私たち取材班がテーブルに積み上げた薬袋を前にため息をついたのは、杏林大学保健学部教授で抗うつ薬の研究を専門にしている田島治さん。薬袋は5つ。うつの症状を訴えたある主婦が、5ヵ所の医療機関を回り、処方された薬である。量も種類も、見事なまでにバラバラだったので、投薬の根拠は何か、なぜ処方が異なるのか、その理由を探るため、田島さんに鑑定を依頼したのだ。
 田島さんによれば、そもそもの診断が真っ二つに分かれているという。うつ病の治療では、一般に広く使われている抗うつ薬を処方した医療機関が3つ。うつ病の一種で、かつては「躁うつ病」と呼ばれていた「双極性障害」の患者に処方する「気分安定薬」を処方した医療機関が2つ。同じ症状を訴えたにもかかわらず、である。
 なかでも問題なのは、処方された薬の種類と量が初診の患者に出すものとしては異常に多いことだと、田島さんは指摘する。さらには、そもそも日本の精神科医の多くが、抗うつ薬を安易に処方していると警告している。症状が良くならなければ、薬の量も種類も増やしていく。「多剤療法」と呼ばれているが、これは日本独特の治療法だという。「抗うつ薬の投与は基本的に1種類」というのが、国際的にも共通の大原則なのだが、これが守られず、多くの場合、症状をかえって悪化させてしまうケースが少なくないと、田島さんは主張する。
 「医師が鈍感になってしまっている。“うつの人だからこのくらい出して当たり前だ”と。抗うつ薬は、今の医師が思っている以上に色々な心の働きに影響する薬ですので、適切に使わないと、患者さんの病状だと思っているものが、実は薬による影響だったということも、かなりあり得る。そのくらい強力な薬なんです。ですから、うつ病というものの見立てとか、薬の役割とか、そういう根本的なところも考え直さないといけない」
 主婦が処方された薬の中には、“不適切”としか言いようのないものも見うけられた。
 「これはいくらなんでも多い。ちょっと理解に苦しみます」と田島さんが呆れたのは、不安感を鎮める効果のある抗不安薬を3種類も投与したクリニック。さらに、副作用が強く、初診の患者には常識的には処方しない抗うつ薬を処方した病院もあった。初めての人がこれを飲むと、ぐらついたり、逆に気分が悪くなってしまう恐れがあるという。

 「でもね、今日持ってきていただいたのは、まだマシなんです。これよりももっともっとビックリするような処方があるんですよ。なんでしたら、いつでもご紹介しますけれどね」と、田島さんは語気を強めた。
 
 うつ病が、“心のカゼ”と呼ばれるようになったのは、90年代後半。そこには「誰でもかかる可能性があるが、適切な治療を受け、休養を取れば必ず治る病気である」という意味が込められている。そこには、当時、うつ病に対する偏見が社会に根強く存在するなか、精神科を受診することさえためらい、症状を悪化させていた患者を救おうという医療側の意図があった。またSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という、これまでの抗うつ薬に比べて副作用が少ないうえに効果が高いとされる薬が開発され、治療に大きな効果を上げていた事も、その流れを後押しした。
 その狙いは、ある意味では成功した。厚生労働省によれば、うつ病などの気分障害の患者は、1999年は44万人だったのが2005年には92万人に達し、それ以降も、増加のスピードに弱まる気配がないことから、すでに100万人は超えていると見られている。これには、うつ病自体の広がりもさることながら、誰もが気軽に精神科を受診できる環境が整ってきたことも大きい。
 しかし、一方では、思いもよらない事態も招いている。アメリカでの最新の研究によれば、患者の50%が症状を再発させており、25%が治療に2年以上かかっている。残念ながら、うつ病は「誰でもかかる可能性があるが、すぐに治るかどうかは分からない」、つまり“心のカゼ”とはとても言いにくい状況に陥っているのだ。
 
 「薬を飲めばすぐに治る」と言われてきたのに、一向に回復しない。そんな状況が続いた患者が、医師に対する強い不信感を持つのは無理もない。
 東京・虎ノ門にあるクリニック「メディカルケア虎ノ門」には、抗うつ薬を服用しても症状が改善しなかったり、職場に復帰してもすぐに再発するなど、長年、うつ病に苦しむ患者が数多く通う。なかには、いくつもの医療機関を渡り歩いた末、“最後の頼み”として駆け込んでくる人もいる。虎ノ門という場所柄、患者は大企業や官公庁に勤めるサラリーマンが多い。
 「予約しても、待たされて診察は3分とか5分。“先生ともっとお話ししたいんですけど”って言ったら“ここでは無理だから”と言われて。もう自分の求めているものは、そこでは得られないと思ったので転院してきました」(40代女性)
 「患者として求めるのは、薬よりも話を聞いてもらいたいということ。辛さを理解し、それに対するアドバイスが欲しいのに、されるのは薬の話ばかり。“この薬効いたの?どうだったの?”という話が続くと、大げさに言えば人体実験されているような感じに思えます」(30代女性)
 「1時間ぐらい待って診療が10分だとして、投薬され続けていると、結果がだんだんワンパターンになっていくんです。毎回、話がオウム返しなんですね。ある時、僕は“投薬に限界を感じるんです”と、お医者さんに問いかけたんです。そしたら、“入院する?って言うんですよ。“入院じゃなくて社会復帰したいんですよ、僕は”と言ったら、“それはしんどいよ”という話になって、要は薬を変えることしかないんですね」(30代男性)



 抗うつ薬の投与を最優先に考えてきたうつ病治療の常識が、今、大きく変わろうとしている。取材を通して明らかになったのは、多くの現場では今なお、“不適切”な治療が、ごく当たり前のように続けられているという実態だった。
 この本は、今年(09年)に放送された、『NHKスペシャル うつ病治療 常識が変わる』と6月1日放送の『クローズアップ現代 抗うつ薬の死角』の内容に追加取材を加えて、取材班が書き下ろしたものである。番組放送後、視聴者からの反響が極めて大きく、電話とメールをあわせて3000件を超え、取材を受けた医療機関には問い合わせが殺到した。


NHKスペシャル うつ病治療 常識が変わる
宝島社
NHK取材班

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オーバードーズ(wikipedia)
(薬物過剰摂取、drug overdose)[1]とは化学物質(多くの場合、薬品やいわゆるドラッグ)を、生体のホメオスタシスがそこなわれるほど多量にまたは集中的に摂取すること、それによって起こる状態、症状、または概念。心身に深刻な症状を引き起こし、死亡する場合もある。本質的には生体における毒の作用の一例である。どのくらいの量によって死に至るかは主に動物実験を元にした半数致死量という概念があり、致死量の低い物は毒薬・劇薬に指定されていて容易には入手できないようになっている。ただし人工物の性質上厳密には薬品すべてに毒性が含まれているとも言えるため、多量摂取には注意が必要である。オーバードースは身体に深刻な問題を引き起こすだけでなく、薬物依存や、時にはそれに使う薬の売買などを目的とした犯罪に至るケースもある。また、現在若者の間で、精神薬などの不法入手によるオーバードースが問題になっている。
doseとは薬物の1回あたりの適正服用量のことであり、過剰・超過を意味するoverを付加した複合語のOver Dose となり、そのそれぞれの頭文字をとって、ODと略される。


沖縄県沖縄市
富村カイロプラクティックオフィス
富村政昭

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