ムダ医療仕分けが患者を救う (続)

臨床試験の結果を無視

スミスのチームは、腰痛患者を対象としたX線やMRI(磁気共鳴映像法)検査も問題視している。腰痛には無関係な異常を見つけるだけに終わることが多いためだ。
40歳以上の8割には、腰の部分に膨らみなどの変形が見られる。 医師は手術したくなるが、これは痛みの原因ではない。こうした「異常」がCTやMRIに現れても、腰痛と結びつけるにはほとんど意味がない。

 大半の腰痛は筋肉の緊張などによるものだから、画像では原因は分からない。たとえ手術をしても、その効果は市販薬や運動や体を休めることとはほとんど変わらず、手術だけは大きな危険を伴う。

 腰痛は6週間もすれば、たいてい消える。
 だが患者は早く治したがり、医師や放射線技師には患者に早く治したいと思ってほしい金銭的動機がある。「腰痛の発症から6週間以内にMRI検査を行うのは、意味がないばかりか、手術件数と治療とコストを増やすだけだ」と、麻酔科医で北米脊椎学会会長のレイ・ベーカーは言う。


 ブロディの提案に「拍手を送りたい」というベーカーは、ほかにも脊椎専門医の大きな収入源になっている不要な処置があると考えている。医療研究品質局によれば、07年には少なくとも35万1000件の脊椎固定術が実施され、費用は総額262億ドルに上った。

 脊椎固定術は、骨折や腫瘍が原因で痛みが起こるケースを除けば、治療効果は期待できない。だが金銭的には大きな魅力があると、シャノン・ブラウンリーは07年の著書『過剰治療』で指摘している。脊椎固定術は1回7万5000ドルも取れるので、医療機器メーカーや病院、外科医はやめるわけにはいかない。

 「私たち医師は、何かを正当化するのが得意中の得意だ」と、ブロディは言う。「患者にとって最善の治療法が、いつの間にか医師に最大の利益をもたらすものと重なっている」

 ブロディは、膝の変形性関節症の関節鏡視下手術も不要だと考えている。04年のある研究によれば、この手術が運動機能を回復させ、痛みを軽減する効果は、偽手術と同程度でしかなかった。
 たとえ効果があったとしても、それは患者が効果を信じ切っていることから起るブラシーボ(偽薬)効果でしかない。それでも整形外科医は、約6000ドルを請求できるこの手術を今も続けている。


 臨床試験の結果を無視する医師はほかにもいる。アメリカでは、脊椎を固めるために背骨に針でセメントを注入する椎体形成術が年に約17万件行われている(費用は1件5000ドル前後)。
 だがニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに昨年発表された2件の研究によれば、この手術が痛みと機能障害を緩和する効果は、偽手術(麻酔と切開は行うがセメントは注入しない)と同程度にすぎない。
 外科医師は、この手術を受けた患者には痛みが消えたと感謝されていると反論する。しかし「偽手術を受けたグループにも『奇跡の回復』を遂げた患者はいた」と、研究の1つを率いたメイヨー・クリニックのデービッド・コールメスは言う。


 心臓外科医は毎年、冠動脈閉塞の見られる患者数千人にバイパス手術を施している。心臓内科医も数千人に血管形成術を行っている。血管形成術には、ステントと呼ばれる金網状の筒を入れて、血管が狭くなるのを防ぐ場合が多い。
 5件の大規模な臨床試験によれば、ステントを留置したときの心臓発作や死亡のリスクの減少幅は、まず投薬治療を行った場合(その後も痛みが残ったときはステント留置を行う)と同程度だ。それなのに、急を要しない血管形成術が年に約50万件行われている。費用は1回5万1000ドル。この手術を受けている患者には、投薬治療のほうが適している人もいる。



 治療や検査を受ける側も、不要な処置を後押ししている。子どもが頭を打ったら、親は医師にCT検査をしてくれと求める。鼻水の止まらない人は、抗生物質の処方箋をもらうまで診察室を出ようとしない。「忙しい時は、治療が不必要な理由を母親に説明するより、処方箋を書いたほうが楽なことがある」と、ニュージャージー医科歯科大学の小児科医ベス・プレッチャーは言う。


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沖縄県沖縄市
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富村政昭

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